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結果は予想どおりで、ティーンエイジャーの脳では、まだミエリン鞘形成が続いていた。
いや続くどころか、思春期にはミエリンが2倍に増加していたのである。
この上側髄板というのは、脳の帯状回と海馬を連絡する中継局の役割を果たしている。
海馬は脳の中心にある細胞群で、新しい記憶をふるい分けするときに活躍するところだ。
映画「メメント」の主人公は、自分が何をしたいか、さっき誰に会ったかなど、何でも紙に書きとBの観察では、思春期になってもミエリン鞘形成が続いている場所がもうひとつあった。
それは情動をつかさどる帯状回である。
帯状回の後ろ側から伸びる神経線維は、脳幹と脊髄につながっている。
脳幹と脊髄は、心臓がどきどきしたり、手が汗ばんだりといった本能的な反応をコントロールする、ドアを力まかせに閉めたいという衝動も、おそらくここから出ているのだろう。
別の言いかたをすれば、ミエリン鞘形成が続いている場所は、前後関係のはっきりした古い思考と、すばやい反応を結ぶ回路上ということになる。
そうなると、Bの発見は次のような疑問へと発展する。
思春期にその領域がまだ発達途上なのだとしたら、ティーンエイジャーが羽目をはずしてぶつとんだことをやるのはそのせいなのか?本能的な反応と、理性的な対応の連絡がまだ安定していないから、ふだんは礼儀正しい14歳の男の子が、ゴミ出しを命じられたとたん、かんしゃくを起こす。
大事な情報は入れ墨にしていたほどだ、長期記憶は確かで自分が何者かわかっているが、海馬がやられたために、数分前のできごとを記憶できないのである。
神経科学の世界には、海馬の役割をはじめて研究者に知らしめたH・Mという伝説の人物がいる。
てんかんの重い発作に何度も襲われたH・Mは、1953年に脳の一部を切除する手術を受け、このとき左右の海馬も取りのぞいた。
手術のおかげで発作はおさまったが、彼は最近経験したことを何も記憶できなくなってしまった。
海馬がないために、新しい記憶を長期保管庫に移せなくなったのだ。
円を描くとか、自転車に乗るといった機械的な動きは学習できるし、手術を受ける前のことは覚えている。
ついさっき話をしたのが誰だったか忘れてしまうのだ。
H・Mは「毎日が完全に孤立している」と語った。
「幼少期から思春期のはじめごろは、まだ情動的な経験と認知プロセスがきちんと統合されていないの。
だから状況とは無関係に、衝動的な行動に駆りたてられることもあるわ」Bによると、ミエリン鞘形成は概して女の子のほうが速いという。
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